閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは?
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、睡眠中に呼吸が止まることにより、昼間の眠気をはじめとする様々な症状や病気を引き起こす疾患です。
睡眠時無呼吸症候群の種類
成人OSAS
症状
- いびきをかく
- 呼吸が止まる
- 夜間に目を覚ます(何度もトイレに起きる)
- 起床時の頭痛
- 昼間の眠気
- だるさ
- 集中力がない
- 作業能率が悪い など
原因
- 肥満
- 扁桃腺が大きい、鼻の通りが悪い(上気道の形の問題)
- あごが小さい
- 加齢 など
小児OSAS
小児のOSASは、大人のOSASと症状や合併症など多少異なってきます。 小児OSASで特徴的なのは、発育障害や脳機能へ影響を及ぼすことです。 睡眠中、特に最初の深い睡眠で成長ホルモンが多く分泌されますが、無呼吸などで睡眠が障害されると分泌が抑えられてしまいます。 「寝る子は育つ」といわれていますが、睡眠の質がよいことに加え、年齢に応じた十分な睡眠時間を確保してあげることが大切です。
症状
- いびきをかく
- 呼吸が止まる
- 寝相が悪い
- 寝汗が多い
- 夜間に目を覚ます
- 夜尿
- 昼間の眠気
- 発育が遅い(低身長・低体重)
- 落ち着きがない
- 学習障害 など
原因
- 扁桃腺、アデノイドが大きい
- あごが小さい
- アレルギー性鼻炎
- 肥満 など
睡眠時無呼吸症候群の合併症について
- 高血圧
- 糖尿病
- 不整脈
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 心不全
- 脳卒中
- 抑うつ など
いびきは、睡眠中に体の筋肉の緊張が低下することによって空気の通り道(気道)が狭くなり、のど(咽頭)が振動することによって生じますが、さらに狭くなると呼吸が浅くなり、完全に閉塞すると停止します。
健常な人でもいびきをかいたり、呼吸が多少止まったりすることはあります。 睡眠時無呼吸は程度の問題であり、軽ければ自覚症状もなく健康への影響もほとんどない人もいます。 しかし、ひどくなってくると昼間の眠気や作業能率の低下など日常生活に影響を及ぼします。 さらには、高血圧、糖尿病といった病気を引き起こすようになり、特に重症のOSASが長年続くと、重篤な不整脈、心筋梗塞、脳卒中といった生命予後にかかわるような疾患を引き起こします。
睡眠時無呼吸症候群の診断
スコアが、「11点以上だと中等度の眠気」「16点以上では重度の眠気」になります。
このアンケートは交通事故との関連が高いといわれており、点数が高いと交通事故のリスクも高まります。
ただし注意が必要なのは、重症のOSASであっても眠気の症状を伴わない方もいるため、眠気がないからといってOSASの存在は完全に否定できません。
自覚症状だけではなく、合併症の存在もひとつの重要なサインです。
睡眠時無呼吸症候群の検査の流れ
簡易睡眠検査
鼻や指にセンサーをつけて、呼吸や血中の酸素の状態などを測定し、睡眠呼吸障害の程度(無呼吸低呼吸指数=Apnea Hypopnea Index:AHI)を算出します。AHIが40以上で眠気などOSASの症状が明らかな場合、CPAP療法の対象となります。AHIが40未満であれば、さらに精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査:PSG)が必要です。
測定項目
- 鼻の呼吸フロー
- いびき
- 胸もしくは腹の動き(呼吸努力)
- 血中の酸素の状態
- 脈拍数
- 睡眠中の体位 など
簡易睡眠検査の流れ
クリニックでの問診・診察、アンケート調査
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睡眠時無呼吸症候群の疑い
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クリニックより検査機器の貸し出し
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自宅にて簡易睡眠検査の実施
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クリニックに検査機器を返却
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検査結果の説明
簡易睡眠検査の施行方法
当院での問診、眠気のアンケート調査の結果、簡易睡眠検査が必要と判断された患者さまには、当院にて検査機器をお貸し出しするか、患者さまのご自宅へ検査キットを郵送させていただきます。 郵送の場合は検査終了後、着払いで検査キットを返送していただき、後日クリニックにて検査結果のご説明をさせていただくシステムとなります。
終夜睡眠ポリソムノグラフ検査(PSG)
専門の検査施設等に入院して診断を行います。体に様々なセンサーを取り付け、睡眠の質(眠りの種類や深さや)を評価をします。また、睡眠中に起こる異常行動や不整脈なども分かることがあり、睡眠検査のゴールドスタンダードとされています。当院でPSGによる精密検査が必要と判断された患者さまは、提携する関連病院へ紹介させていただきます。
測定項目
- 脳波
- 眼電図
- おとがい筋電図
- いびき
- 胸腹壁運動
- 体位
- 心電図
- 経皮的動脈血酸素飽和度
- 脚筋電図
OSASの重症度は、一晩の睡眠を通して1時間あたりの無呼吸や、低呼吸(呼吸が浅くなる状態)の頻度、無呼吸低呼吸指数(AHI)で表されます。
AHIが5回以上認められ、日中の眠気などの自覚症状や高血圧などの合併症がある場合、OSASと診断されます。AHIが5~15回が軽症、15~30回が中等症、30回以上が重症とされています。
睡眠時無呼吸症候群の治療
1. CPAP(持続陽圧呼吸)による治療
CPAP(持続陽圧呼吸)療法とは
CPAP療法は、器械によりのどに空気圧をかけて、空気の通り道である気道が閉塞しないようにする治療法です。
OSASに対し、現在最も治療奏功率の高いものといえます。
CPAP療法の効果
「よく寝た」という熟眠感が得られ、スッキリと目覚めることができます。 CPAP療法を適切に行うことにより、睡眠中の無呼吸やいびきが減少します。 また、治療を継続することによって、眠気がなくなったり、夜間のトイレの回数が減ったりという、OSAS症状の改善が期待され、さらには高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病改善効果の報告もあります。 CPAP療法は、めがねをかけていることと同じで、治療器を使用しない限り無呼吸は無くなりません。 また治療器を付け慣れるのに2~3ヶ月かかる場合もあります。 CPAP療法は、検査を行い一定の基準を満たせば健康保険の適用になります(簡易睡眠検査でAHI40以上、PSGでAHI20以上がCPAPの保険適応)。 その場合には、定期的(月1回)な外来受診が必須となります。
診察時に主治医と相談し、より良くCPAP療法を継続していただくことが重要ですので、必ず外来にかかるようにしてください。
CPAP装置の医療保険システム
メリット・デメリット
メリット
- 治療奏功率が最も高く、生命予後を改善させる。
デメリット
- 月に1回の通院経過観察が必要。
- 効果は高いがCPAP治療で根治は望めない。
2. 口腔内歯科装置(マウスピース)による治療
上下一体型のマウスピースで、普段の噛み合わせより下あごが前に出るようにすることによって気道を広げます。
睡眠検査の結果、マウスピースによる治療が適当と判断された場合は、提携する歯科医院へ紹介させていただき、マウスピースを作製していただくことになります。
マウスピースの効果を判定するために、マウスピースを装着しての睡眠検査を再度行うことをおすすめします。
マウスピースはCPAPと比較し手軽に行える治療で、旅行に携帯することも容易ですが、OSASの重症度が高い方、肥満がある方などではCPAP程の治療効果は期待できないことに注意が必要です。
メリット・デメリット
メリット
- 簡単に装着することができ、小さいので旅行など携帯することも容易。
- 定期通院の必要がない。
デメリット
- CPAP程の治療効果が得られない。
- 重症OSASでは効果が低い。
3:手術による治療
手術療法はOSASの根本的な治療が期待できる方法です。 手術効果の高い方の特徴としては、OSASが重症でない、肥満が強くない、扁桃腺が大きい、年齢があまり高くない、などが挙げられます。 アデノイド肥大や扁桃肥大があった場合は、手術が必要となることがあります。 特にお子さまでは大人よりその頻度が高く、肥大が認められOSAS症状がある場合は治療が必要となることがあります。 また、鼻閉を起こす鼻疾患は、CPAPや口腔内装置の治療を妨げるので、手術が必要となることがあります。
SASの手術治療には入院の上、全身麻酔による手術が必要となります。 当院で手術療法が適当と判断された方は、提携している関連病院へ紹介させていただいております。
メリット・デメリット
メリット
- OSASの根治が期待できる。
デメリット
- 入院の上、全身麻酔による手術が必要となる。
- 手術効果の期待できる患者さまが限られる。
4. 生活習慣の改善
生活習慣の改善だけで直ちにOSASを治すことは困難ですが、他の治療と併せることによって軽減させることは可能です。 また少しでも良い睡眠をとるために、眠りにつきやすい環境を整えることも必要です。
側臥位枕(横向き寝枕)
少しでも重力の影響を受けないように、体を横向きにして寝ると症状が軽減する場合があります。 側臥位睡眠がSASの改善に有効かどうか、体位モニターのついた簡易睡眠検査を行うことで判定が可能です。 横向き寝によりAHIの有意な改善が得られる方に枕の効果が期待できます。 治療法のメリットとしては使用が簡便であり、導入の際の患者さまの抵抗が少ない事が上げられますが、 睡眠中に寝返りをうって仰向けになってしまうと効果がなくなるため、他の治療法と比較してやや不安定な治療となります。
減量
減量により皮下脂肪の量が下がると、気道が拡張し、SASの改善が期待できます。体重の変動とAHIの変化について観察した研究によると、平均して10%の体重減少でAHIが30%減少し、20%の体重減少でAHIが50%減少したという報告もあります※。 減量は根本的な治療になり得る治療法ですが、減量までに時間がかかることが多く、その間はCPAP、マウスピースなどで治療を行うことが望ましいです。 減量してもOSASが残存する人もいますので、その場合は、CPAP、マウスピースを継続したり、手術療法、側臥位枕を組み合わせたりすることになります。
※Pappard PE,et al. JAMA 2000:284:3015-
減酒
アルコールは、筋肉をゆるめる作用があるため、気道の閉塞が起こりやすくなります。 また寝つきが良くなることもありますが、逆に夜中に目が覚めたり、浅い睡眠を増やしてしまう作用もあります。
メリット・デメリット
メリット
- 肥満はOSASの一番の原因で、根本的な治療法である。
デメリット
- 減量までに時間を要することが多く、その間他の治療が必要となる。
生活習慣の改善だけでOSASを治すといったことは困難ですが、他の治療と併せることによって軽減させることは可能です。 また少しでも良い睡眠をとるために、眠りにつきやすい環境を整えることも必要です。
【資料提供】株式会社フィリップス・レスピロニクス合同株式会社、株式会社MAGnet